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2018/07/29

北朝鮮への制裁は抜け穴だらけ。ん?朝鮮総連は?

北朝鮮核の資金源「国連捜査」秘録

 「北朝鮮 核の資金源『国連捜査』秘録」古川勝久 (新潮社) 読みました。

 この古川勝久さんは1966年シンガポール生まれ。2011年10月から2016年4月まで、国連安全保障理事会・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの委員を務めてはりました。この本はその時の経験をもとに書かれたものです。国連には「専門家パネル」が10いくつかあるそうです。古川さんがこの委員になった経緯は書かれてはいませんが、本人の働きかけや、いろんなコネクションがあったんやろうと思われます。安保理の決議に基づいて制裁すべき北朝鮮の組織や個人を特定し、国連にレポートを上げる仕事です。

 この古川さんという人はとても正義感が強く、責任感もあって、職務に忠実、それでいて大胆なところもあるように思われます。古川さんがこの委員を務めた時期は、ちょうど金正恩のお父ちゃんが死んで後を継ぎ、やがて核・ミサイルの実験をポンポンするようになった頃ですね。

 もともと北朝鮮への制裁はずっと前からあったわけで、この数年、特に厳しくなり、それでやっとこの前の米朝会談にまでこぎつけたわけですが、この本を読むと、結局そこまで追い込むためには、こういう人たちの地道な作業がないとでけへんかったということがようわかります。一方で、実際の現場での制裁は抜け穴だらけなのがわかり、愕然ともします。

 オーシャン・マリタイム・マネジメント社(OMM)というのが最初に出てきます。北朝鮮随一の海運会社ですが、実はこれがいわば北朝鮮の国策会社、北朝鮮の政府機関そのものみたいなもんやそうです。実質的にこの会社がそれこそ世界中で好き勝手に軍事物資を運搬してることがわかってても、しっかりと証拠を上げへんことには制裁がでけへんわけですね。

 その証拠をつかむのがこの古川さんの仕事のすべてやったみたいです。国連とゆうてもそれほど権限があるわけではないから、加盟国に捜査の協力を求めても、結局自国に不利になるようなことは決して出さへんから、たいていはごまかされたり、はぐらかされたりする、と。

 また、よく言われるようにチャイナ、ロシアは北朝鮮寄りです。つまり、それぞれの国の業者が北朝鮮の軍事ビジネスでよう儲かるわけですね。なので、せっかく制裁対象になっている貨物を運んだ証拠を見つけたとしても、すぐに会社の名前を変えたり、船の所属を変えたりと、もうやりたい放題で制裁逃れをしているようです。

 またチャイナには、北朝鮮からおびただしい数の人たちが学術の名目で人が渡っていて、自由に軍事の元になる技術情報を吸収してるそうです。また東南アジアやアフリカ各国でも、北朝鮮人は国から自由にパスポートをもらって勝手に出入りしているそうです。

 そしてめっちゃ驚いたのが、この北朝鮮の制裁に最も利害関係があるはずの日本の対応です。もちろん、現場の官憲に(スパイでもない限り)悪意はないんやろうけど、結果的にものごっつい不可解やったり無責任な対応になるようです。自分の責任にしたくないからタテ割りをいいことに、捜査情報を収集しようにも、たらい回しされてしまうようなことがよくあるそうです。

 あー、いかにも日本やなあ。そして2015年3月、制裁対象として把握されていた北朝鮮の「ヒチョン号」という船が、鳥取県境港の沖合で発見された、と。安保理の決議では即座に資産凍結することが義務付けられているというのに、海上保安庁はこの船を検査した後、解放してしもたんやそうです。突き詰めたところ、「日本には、船舶を資産凍結する法律がないから対応できない」ということやったと。

 もう唖然としますね。古川さんはこのパネル委員の任期を終えた後の2017年1月、官邸に呼ばれ、3月には自民党本部に呼ばれ、説明をしたそうです。ただ、その後の国会はモリカケ一色となってしまったのですが。そして4月には産経新聞が「対北朝鮮緊迫 制裁不履行 『不作為』国際的批判も 煩雑作業、運用追いつかず」と報じました。これを機に法律も作っていく流れができてきたようです。

 古川さんという、たった一人の日本人のおかげでここまで来たんかなあ、と思うし、たった一人しかおらへんのか!と残念にも思います。結局、敵は身内におるような気がしますね。

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