去年の11月に出た本です。『工作員・西郷隆盛』倉山満。
倉山さんはものすごい該博なんやけど、本では一般の人にわかりやすう書いてはるので読みやすいし面白いですね。で、「せごどん」ですが、これは倉山さんやなくて、宮崎正弘さんがどこかで書いてはりました。もちろんNHKの大河ドラマのタイトルは林真理子さんの原作やけど、もともとは司馬遼太郎の『飛ぶが如く』に拠ったものですね。ところが西郷さんの足跡を全部踏破しはった宮崎さんは「せごどん」と言うてる人はどこにもおらへんかったと書いてはりました。「さいごうどん」を早口に言われたらそう聞こえんこともないかな?どちらにしても司馬遼太郎は作り話の天才やからね、ということらしいです。
で、本に戻って、日本人は西郷さんは大好きで、本も数え切れんぐらい出てますが、これは西郷さんを「工作員」として見たらどうやろう、という本です。西郷さんの強みは誰からも好かれるということでしょうけど、インテリジェンスの観点から見たらそれは「立場が異なる敵とも信頼関係を築く」ということやそうです。間違えたらあかんのは、「中立」というのは「対立する両方の敵」ということやと。だからこそ、自分の立場を強く持ち、筋を通す、ということが必要なんやと。一流工作員、西郷さんですね。
ネタをいくつか。私は江戸時代は始めからずっと鎖国してたと思てましたけど、鎖国を始めたのは三代将軍家光で、家康はむしろ貿易には積極的やったそうです。で、最近の研究では「鎖国」は明治政府が江戸幕府を悪く言うために使うた言葉なんやそうです。幕府は外国には港を限定して貿易統制をしていたのはたしかですが、当時の日本は資源大国で、江戸期を通じて莫大な金や銀が流出し、枯渇してたそうです。つまり江戸時代というのは、「経済のグローバル化と政治面での伝統墨守の双方を見なければいけないのです。」と。
「安政の大獄」を起こした井伊直弼は私も習いましたが、どちらかというと悪い人のようにとらえてました。不平等条約である日米修好通商条約を皮切りに、英仏露蘭とも条約を結んだけれど、これは戦わずして独立国の地位を捨てた、と言われますが、戦わずして植民地になることを避けた、とも言える、と。その後の展開や結果を知っているいまの私らは、どうとでも言えるわけで、その時代、環境の中で必死で最善の策を考えてはったということは、私らは謙虚に見ていかなあかんと思いました。
文久元(1861)年ロシアの軍艦が突然対馬にやってきて、勝手に上陸してきたときは幕府はイギリスに頼んでロシアを追い払ってもらった、と。たまたまそれで済んだけれども、実は当時の駐日英国大使のオールコックは対馬占領を計画していたそうです。本国の許可が下りなかったためですが、「もし許可が下りていたら、一巻の終わりでした。住民は奴隷の如く扱われ、対馬は香港のようになっていたでしょう。」やて。ひえーー。歴史の偶然に感謝、やけど、その時々の判断がいかに重要か、当たり前ですけど間違うたらあかんね。
今日、安倍ちゃんがトランプとまずは通訳だけの2人だけの会談をしました。判断を間違わへんように祈りたいですね。