岩波書店と『紫禁城の黄昏』
2017年04月26日 公開
昔、高校の時の歴史の先生がけっこうシニカルな人で、「日本から朝日新聞、NHK、岩波書店が無くなったら、世の中すごい良うなります」て、いつもゆうてはったことを覚えてます。その時の意識では、権威あるものは常に疑わなあかん、というぐらいの意味にとってました。まあその頃、その先生が保守か左翼やったんかはようわかりませんが。ま、朝日新聞は今ではその先生のゆうてることが当たってるんとちゃいますか?(笑)
で、今はどうか知らんけど、岩波書店て、本屋さんにはけっこうタカビーやったらしいね。基本的に本屋に置く本は全部買い取りやったらしい。売れへんかった分は全部本屋さんの持ち出しになるわけや。まあ高度成長期やったから、あんまり気にならへんかったんかも知れんね。
ところで、やねん。色んなことを知り始めた私ですが、先日、渡部昇一さんが亡くなりはりました。めっちゃ残念です。右下にもありますけど、私、けっこう渡部さんの本は好きやってん。
で、この渡部さんが監修して、2005年に『完訳 紫禁城の黄昏』という本を祥伝社から出しはってん。これは、そもそもの原作は、1934年3月に英国で出版された『紫禁城の黄昏』(Twilight in the Forbidden City)という本やねん。著者は満洲国皇帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)の個人教師やったイギリス人、レジナルド・ジョンストンです。
ところがその渡部さんの本のはるか前の1989年に岩波書店がこれの翻訳版を岩波文庫で出してはってん。これは、その少し前の1987年に映画「ラストエンペラー」が大ヒットしたことにあやかって出版したと言うてもええと思います。(この映画、私も見ましたよ。幼少時にカーテン?の布地と戯れる溥儀の幻想的なシーンがめっちゃ印象的やったね。)
ところが何と、原作では全26章あるんやけど、岩波文庫ではそのうちの1章から10章と、16章がばっさり削られてるねん。意味わからんわー。訳者は、「主観的色彩の強い部分を省いた」と言うてはるらしい。何やそれ、「主観的」かどうかは読者が判断することやんか。
渡部さんの完訳版と岩波を読み比べると、明らかに当時の中国共産党が嫌がるような、あるいは触れてほしくない部分が削除されたというわけや。しかも意図的な誤訳、どう考えてもそれ、反対の意味やろう、というような部分もあるらしい。
全体として、満州事変から満州国設立に至る過程が、決して日本側の一方的な「侵略」などではないことがわかってしまうらしい。(ごめん、この本は私はまだ読んでません。)ということで、日本のアカデミズムを支えてきた岩波書店さん、きちんと歴史の真実に向き合ってくださいね。